講座の紹介

ご挨拶

伊藤壽記教授

平成17年1月、大阪大学大学院医学系研究科に生体機能補完医学寄附講座が新設され、昨年末で丸10年を経過致しました。この節目を越えるにあたり、心機一転、講座名を統合医療学寄附講座と変更致しました。一言ご挨拶申し上げます。

近年、医学・医療の目覚しい進歩により、各種病態に対する診断技術や治療成績の向上が認められます。そうした結果、急性疾患はよく制御されるようになり、疾病構造は急性疾患から慢性疾患へとシフトし、我々を取り巻く生活環境の整備と相まって、我々はまさに超高齢社会に突入しています。その疾病のほとんどを構成するものはがんを始めとする高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満などの生活習慣病です。こうした変化を受けて医療費は年々高騰を続けており、その結果、医療保険制度は破綻の危機に瀕しています。

一方、患者さんの意識構造にも変化がみられます。インターネットなどによる情報の急速な普及により、予防医学や健康への関心度が増し、治療選択時の自己決定意識の向上がみられます。すなわち、患者さんの行動意識は“受動”から“能動”へと変化し、患者さんは価値判断の基準として生活の質 (QOL; Quality of Life) を重視した医療を求めるようになりました。

こうした動きを背景にして、1990年前後から補完代替医療(CAM; Complementary & Alternative Medicine、通常“カム”と呼ばれる)という領域が出現しました。さらに、近年では、CAMを近代西洋医療と有機的に融合させた、理想的な全人的医療体系として、統合医療(Integrated or Integrative Medicine)という概念が提唱されています。

我々の教室では、たとえば、機能性食品(いわゆる健康食品を含む)、鍼灸、アロマセラピー、ヨーガ、サイコセラピーなど “カム”の色々な手段を用いて、生活習慣病を主体とした各種病態を対象に、臨床試験を通じてエビデンス(科学的根拠)を追求しております。また、最近では大規模災害の後遺障害に対して複数のCAMの手法を組み合わせた、統合医療的アプローチによる臨床試験も行いました。そして、得られたエビデンスを一つ一つ臨床の現場へ還元し、患者さんのさらなるQOLの改善を目指して行こうと考えております。

2015年1月1日
大阪大学大学院医学系研究科統合医療学寄附講座
特任教授 伊藤壽記